仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より
天気に関わるご祈願があるのですか?
布教研究所助手・見附市・如実院住職 田中隆寛
今年は記録的な暖冬でした。
一月二十八日付の『読売新聞』の記事に「小雪で雪乞い神事」とあります。
「金谷山に雪を降らせたまえー。『日本スキーの発祥の地』として知られる上越市の金谷山スキー場で二十七日、関係者約二十人が集まり、開業以来初となる『雪乞い神事』を行った。
同スキー場の営業には七十センチの積雪が必要で、例年は遅くても一月中にオープンするが、暖冬の今年は所々に約十センチの積雪があるだけ。大半は地面が露出し、営業のめどがたっていない。二月十一日には、日本にスキー技術を伝えたオーストリア軍人のレルヒ少佐の遺族を顕彰する『レルヒ祭』が予定されているが、このままでは多くのイベントが中止になりかねないことから"神頼み"に踏み切った」
雪乞いは珍しい例かもしれませんが、旱魃(ひでり。とくに農業に必要な梅雨時の雨不足による水がれ)の時に雨を降らすために祈る雨乞いは、民族・宗教を問わず、古来からありました。
日蓮大聖人は、雨乞い、すなわち祈雨について次のように説明されています。
また祈雨の事はたとい雨下らせりとも、雨の形貌を以て祈る者の賢不賢を知る事あり。雨種々なり。 『下山御消息』
このお言葉から、祈雨によって雨が降ったとしても、その様子を見れば、祈る者が正しいか正しくないかが判別できるとお説きになっていらっしゃることがわかります。
『三三蔵祈雨事』では実例をあげていらつしゃいます。中国で三人の三蔵(僧)が、真言密教による祈雨を行ったが、前代未聞の大風雨が起こり、国土に大きな被害を与えてしまった。これに対して、天台大師や伝教大師は法華経によって、たちまちのうちに雨を降らすことができたというものです。
大聖人ご自身も祈雨をされています。文永八年(一二七一)六月、法華経が最も尊いお経であることを証明するために、真言律宗の僧、極楽寺良観と雨乞いによる対決が行われました。その結果は、良観は暴風を起こして失敗に終わり、大聖人は清浄の行を見事に成就なされました。三日三晩続いた雨は、人畜や鳥虫までも活き返らせたといわれています。
お経の勝劣が明らかであればこそ、願いは叶うのです。