仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より
説話文学と法華経について教えて下さい。
布教研究所助手・見附市 如実院住職 田中隆寛
平安時代に成立した『今昔物語』は文学史上、質・量ともに優れた作品といわれていますが、実は数多くの法華経の功徳の話が含まれています。その中から、目の不自由な女性の話を紹介します。
筑前の国に役人がいました。その妻は目が見えなくなり悲しみのなかで発心しました。 「このうえは、ひたすら善行を積んで、後生のことを頼みとするほかはない。法華経を一途に読誦する日々を送ることにしよう」
この女性は、ひとりの僧について法華経を習うことにしました。そして、数年後のある日、夢の中に貴い僧が現れて、「お前は目の光を失う運命となったが信心の読誦によって、両眼がただちに開くようになるであろう」と告げ、女性の目をなでました。
夢から覚めた後、あの僧の言った通りになり、目が見えるようになった役人の妻は、涙を流して喜びました。この奇跡を聞いた夫、子息、親類、国の内外の人々も法華経を心から敬うようになりました。 このように説話文学の世界においても、法華経は最尊最上の教えだったのです。
薬王菩薩本事品に、 「若し人病あらんに、是の経を聞くことを得ば、病即ち消滅して、不老不死ならん」