仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より
お経について簡単におしえて下さい。
布教研究所助手・谷中本通寺裡 田邉尚志
経とは、サンスクリット語の「スートラ」、パーリ語の「スッタ」を訳したものです。織物のたて糸のことをいい、複雑で難解な釈尊(しゃくそん)の教えを言葉とし、要領よく、またわかりやすい形でまとめたものがこのように呼ばれたのです。
釈尊ご在世の時は、弟子たちは直接教えを受けることができましたが、ご入滅後の教えの散逸(さんいつ)を心配し、弟子たちの集合が始まりました。弟子の摩詞迦葉(まかかしょう)を中心としたこの経典編纂(きょうてんへんさん)の集まりを「結集(けっじゅう)」といいます。
結集では、弟子たちが釈尊の教えを唱え、互いに間違いがないかを確認しました。その時の教えが数百年後に文字として記録され、経典に編纂されました。
経典にも、大乗(だいじょう)経典のサンスクリット語、小乗(しょうじょう)経典のパーリ語、またチベット語の経典などありますが、日本に伝えられた経典は中国を経由してきたので漢訳経典です。経典になった教えは、写経(しゃきょう)によって弘(ひろ)められました。日本では、経師(きょうじ)または書生(しょせい)、経生(きょうしょう)と呼ばれる人々が写経に携(たずさ)わりました。
のちに印刷技術が導入されると、木版印刷によって多くの経典がつくられました。
経典には、釈尊の教えをまとめた「経(きょう)」、教団の戒律(かいりつ)を規定した「律(りつ)」、後世の仏教学者が経の内容に注釈を加えて研究した「論(うん)」、があります。よく八万四千(はちまんしせん)の法門(ほうもん)と例えられるように、数多くの教えがあります。日蓮大聖人はその中でも、末法(まっぽう)の世には「法華経」こそが大事だとし、弘められました。
檀信徒向けに「法華宗おつとめ要典」が発行されています。仮名がふってあり読みやすくなっています。 経本ができるまでの長年にわたる人々の苦労に思いを馳(は)せながら、私たちも釈尊の教えを正しく後世に伝えていくように声に出し、学んでいきましょう。