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仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より

お会式(えしき)のときに、お寺の本堂を造花で飾り付けるのはなぜですか?

布教研究所助手・谷中本通寺裡 田邉尚志

お会式(えしき)のときに、お寺の本堂を造花で飾り付けるのはなぜですか。  

日蓮大聖人は、弘安(こうあん)五年(一二八二)十月十三日辰(たつ)の刻(こく)(午前八時頃)、住み慣れた身延(みのぶ)の地を離れ、常陸国(ひたちのくに)(今の茨城県)へと湯治(とうじ)に向かう途中、武蔵国池上(むさしのくにいけがみ)(今の東京都大田(おおた)区池上)の檀越(だんおつ)(信者)・池上宗仲(いけがみむねなか)邸にて忍難弘通(にんなんぐずう)の生涯を終えられました。この時、大地が揺(ゆ)れ動き庭の桜が一度に時ならぬ花をつけたと伝えられます。

  このような言い伝えから、お会式法要やお逮夜(たいや)の時、白・赤・ピンクの紙で作られた桜の花を、割竹(わりだけ)などでできた長い竿に付けた造花を、本堂の内部や万灯と呼ばれる塔型や行灯(あんどん)型などの大きな明かりの上部に、四方八方に垂らし飾り付け、大聖人のご命日を偲(しの)び、報恩(ほうおん)感謝の心をこめて行うお会式(えしき)を鮮(あざ)やかに彩(いろど)っています。

  江戸時代の風俗事物について書かれた『守貞漫稿(もりさだまんこう)』には「これ(お会式)を行う者、家内の諸所に紙の造花を挟(はさ)む故に、当月(十月)上旬より、三都(江戸・京都・大阪)ともこれ(造花)を売る。長さ三尺(じやく)(約九十センチ)ばかり。江戸にてはここに藤の造り花を付けたるもあり。花は吉野紙。広がり二寸(すん)(約六センチ)ばかり。周(まわ)りの耳を淡紅にし染め、赤あるいは黄紙」と記されており、また当時の年中行事について書かれた『東都歳時記(とうとさいじき)』には、「法会(ほうえ)(お会式)の間、一宗(法華宗)の寺院は仏壇をかがや(輝)かし、造花を挿し荘厳は目を驚かしむ」とあり、法華宗寺院のお会式の壮麗な様子を伝えています。

  また、池上の大聖人ご入滅(にゅうめつ)の地には今も「お会式桜」と呼ばれる桜の樹があり、旧暦の十月(現在の十一月頃)にはきれいな花を咲かせることで知られています。一般にお会式桜と呼ばれるのは、八重桜の一種で十月桜(じゅうがつざぐら)と呼ばれる種類だそうです。花は中輪、八重咲きで淡紅色。開花期は十月頃から咲き始め、冬の間も小さい花が断続的に咲き、翌春四月上旬にもたくさんの花を咲かせるという珍しい桜です。春の花のほうが秋の花より大きいそうです。

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