仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より
お盆の迎え火と送り火にはどういう意味があるのですか?
本山執事・塔頭 持経院住職 高橋俊二
「迎え火」も「送り火」もご先祖さまや亡くなった家族の方々を偲ぶ、人間としての自然な心情から来ています。
そもそも、お盆の行事は陰暦七月十三日から十五日の三日間行われますが、この行事は、お釈迦さまの教えによって、仏弟子「目連尊者」の母親が餓鬼道の苦しみから救われたという故事に習い、ご先祖さまや懐かしい方々の精霊を迎え、いろいろな食べ物や供物をお供えしてご冥福を祈り、お寺さまからお経を読んでもらって、少しでもあの世での苦しみがあれば救ってあげよう。また、せっかくこの世に来ていただいたのだから、この三日間をゆっくりとくつろいでもらおう、という心から出ています。
このご先祖さまの「精霊(しょうりょう・みたま)」を迎える火が「迎え火」で、普通、お盆の初日の夕方、門先や玄関先で麻の皮を剥いだ後の茎「麻幹(おがら)」などを「迷わないで家に帰って来られるように明かりを灯しましょう」と焚く火をいいます。
そして三日間、懐かしい我が家にくつろいで過ごしていただき、充分に心を安んじ喜んでもらえたら、再びあの世に帰っていただく。その時に、あの世への道に迷わないようにと送り出す火が「送り火」です。普通十五日か十六日の午後に、迎えた時と同じく門先や玄関先で焚く、とされています。
夏のひととき、懐かしいご先祖さまたち「精霊」との出会いのため、別れのため、そしてこの世に在る私たちの「けじめ」として、迎え火・送り火があるともいえます。
なお、お盆に踊る「盆踊り」は、この世に帰って来て充分に施しを受け、心が安楽になったご先祖さまたち「精霊」の喜びを表している、とされています。