仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より
宝塔とはなんですか?
鈴木宏正
お寺の本堂、皆様のご家庭のお仏壇の正面にご本尊(私たち信仰の対象)がお祠りされています。一塔両尊と呼ばれるご本尊を拝見致しますと、中心の上部に宝塔があり、塔の中の向かって左側に釈迦如来、右側に多宝如来が安置されています。この様相は法華経の見宝塔品以下、属累品に顕われています。見宝塔品では、多宝如来が釈迦如来の今までの説法(迹門)が真実なることを証明し、またこれから説かれる本門寿量品の教えを見守るため、七宝(金・銀・瑠璃・シャコ・瑪瑙・真珠・マイ瑰)荘厳の多宝塔に座して大地より涌現しました。十方分身の来集・人天被移・三変土田といった儀式を経て、釈迦如来は多宝塔の戸を開かれます。その後、釈迦如来は多宝如来に半座を譲り受け説法を再開されました。多宝如来は過去仏、釈迦如来は現在仏ですから、二仏並座は時間を超越したことの象徴であり、寿量品に説かれる久遠本仏を暗にお示しになっています。
日蓮大聖人は、「末法に入て、法華経を持つ男女の姿より外には宝塔なきなり。若し、しかれば貴賎上下をえらばず、南無妙法蓮華経と唱うるものは、我身宝塔にして、我身又多宝如来なり。聞・信・戒・定・進・捨・慚の七宝を以てかざりたる宝塔なり。かく信じ給ひて南無妙法蓮華経と唱へ給へ。ここさながら宝塔の住処なり」と仰せられています。
お題目を唱える法華経行者は、聞法・信心・持戒・禅定・精進・喜捨・慚愧の七つの宝で荘厳された宝塔となります。即ち、大地より涌現した多宝塔に私達が合掌する時、仏様も私達の多宝塔に向って合掌しているのです。従って、唱題修行する当処は何れの処でも宝塔の住処となるのであります。
お寺の門前、山門に「宝塔」と称するお題目の石塔があります。これは法華宗寺院の標識となります。つまり、宝塔の住する私達の修行道場という意味で建立されているのです