日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
此経を持つ人々は他人なれども 同じ霊山へ詣りあわせ給うなり
解説:学林教授・中原 本門寺住職 光林 孝玄
このご聖訓は、駿州上野郷の地頭・南条時光氏へ宛てられたお手紙の一節です。
大聖人は、七歳にして父親と死別し、若くして家督を継いだ時光の苦悩を思いやられ、多忙の中にも父への報恩の念を忘れず、純真な信仰をつらぬく時光の姿勢を讃えられています。
ご聖句は、法華経(お題目)への信心をつらぬき通した者は、みほとけに導かれ、後 生において「霊山」へ詣でることが確約されていること。故に、信仰を同じく生きた者同志は、間違いなく、霊山にて再会を果たすことができること。後生をしっかりと結ぶ絆を信じ、今を懸命に生き抜く大切さをお教え下さっています。
「霊山」とは釈尊が法華経をお説きになられた法座で、その形状から「鷲のみやま」「霊鷲山」とも称されます。
とくに、ここでいわれる霊山とは、十方三世の諸仏・諸菩薩・人天・大衆が一同に集い、妙法の光明に包まれた安らぎの世界(常寂光土)を意味します。
芳香純美な花びらが舞い、静寂な虚空に天女が奏でる音楽が響き渡り、清浄な風に薫ぜられ、甘露が降りそそぎ、温かな光明に満ちあふれる、生滅変化を離れた永遠の浄土なのです。
お手紙は、次の句に結ばれます。
いかにいわんや故聖霊も殿も同じく法華経を信じさせ給えば、同じところに生まれさせ給うべし。
今生後生をひとつづきの絆に結ぶ妙力がお題目には宿っています。