日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
水あれば魚すむ 林あれば鳥来る
解説:門谷東生
このおことばは、大聖人さま五十九歳の時、四条金吾へ送られた書状の一節です。
四条氏の領地、信州の殿岡からお米が供養されたことに対し、大聖人さまは、いつもながらの変わらぬ厚い志に深く感謝の意をあらわしておられます。
大聖人さまが身延山に入られてからこの時点で七年近くの歳月が流れたことになります。その間、弟子・檀越(信者)を教導し、法華経の読誦と著述に励まれ、静かに修行に精進してこられました。
人々から宗教的偉人と崇められる方々は、罪悪感と使命感の二面をもっています。大聖人さまも仏使としての自覚と凡夫としての内省とが葛藤していたのです。それは種々の迫害・苦難にあうのは、罪業の報いであり、滅し難い重罪を今生一世で果たさせようとしてくださる本仏のはからいであり、法華経を弘通させていただいているからこそと感謝されたように、大聖人さまが、たえずわが内を省察しておられたことを見逃してはならないと思います。
大聖人さまは、我が身が法華経の行者であるならば、諸仏・諸菩薩はこの山におられる水があれば魚が住み、林があれば鳥が集まるものだと、親の如く慕ってくる四条金吾に説かれました。この山は功徳の集まった山であり、入山以来、法華経を読誦した功徳は、今は虚空にもひろがっている。その功徳の遍満している地へ度々参詣すれば、過去遠々の罪障も、今生に必ず消滅されると、益々の信心を奨励されているのです。