日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
法華経を信ずる人は冬のごとし 冬は必ず春となる
出展:妙一尼御前御消息(昭定一〇〇〇頁)
解説:学林助教授・岡崎 長福寺住職 牧野真海
私事で恐縮ですが、筆者(三十四歳)は昨年一月に脊椎を骨折して病院に担ぎ込まれ、あろうことか入院中に脳内出血を発してしまいました。どちらも中枢神経にダメージを受ける怪我と病気です。医師から、「社会復帰にはかなり時間がかかるでしょう」と宣告されたときの恐怖と絶望はとても筆舌に尽くしがたく、思い出すだに身の毛がよだちます。
以来一年余。骨折はほぼ完治し、脳内出血の後遺症で、左半身の感覚異常はありますが、日常生活や寺務などに支障はない程度に回復しました。しかし、この一年は、まさしく筆者にとって厳しい冬の時期でした。後遺症があることを思えば冬はまだまだ続くのでしょう。
「冬来たりなば春遠からじ」
という言葉があります。
ご聖訓に我が身をなぞらえるのはあまりに僭越ですが、大聖人の時代は声高に「法華経信者」を標榜すれば弾圧・迫害などのつらい冬の仕打ちを受ける世情でありました。
にもかかわらず、大聖人はひるむことなくお題目を唱え続け、酷寒の時代を生き抜かれたのです。
このことは現代においても、悩み、苦しむ多くの人々の励みになり、生きる希望と勇気を与えてくれることでしょう。とくに社会的逆境にある人や、難病と闘っている人にとって、力強い元気を授けて下さるのが、今月のご聖訓です。かく申す筆者も、治療やリハビリで精神的不安に襲われたとき、信心の要であるお題目を時に念じ、時に口唱し、何とか挫けずに生かしていただいております。