日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
日蓮は日本第一の 法華経の行者なる事あえて疑いなし
出展:撰時抄(昭定一〇四八頁)
解説:学林助教授・岡崎 長福寺住職 牧野真海
日蓮大聖人が、日本ではじめて法華経本門寿量品のありがたさをお弘めになられたことは、『宝塔』の読者の方にあらためてお話しすることもないでしょう。しかし、意外なことに、法華経をはじめて日本に伝えたのも大聖人だと思っている人がかなり多くいることに驚かされます。
法華経そのものは、日本に仏教が伝来した当初から人々に受容され、滅罪や現世利益の信仰対象として弘まってまいりました。しかし、大聖人以前の法華経は、華厳経や般若経と同格か、もしくは他の経典の下に位置づけられるなど、数多くの経典の中の一つとしてしか認知されていなかったのです。これを覆したのは、平安時代に日本に天台宗をもたらした伝経大師最澄です。最澄は、法華経こそが釈尊の真実の教えであることを主張しましたが、時代とともに日本天台宗は密教化し、法華経を軽んずるようになってしまいました。
だからこそ、大聖人は、今の時代(末法時)は法華経本門の教えが大切なのであり、みずからが弘経の先導として困難に立ち向かう決意として標題のお言葉を述べられたのです。出典である『撰時抄』の撰時とはまさしく「選ばれた時代」という意味です。今こそ法華経本門寿量品が弘まる時である、という思いから、「日本第一の法華経の行者」であることを宣言されました。
大聖人のお心は七百年余を経た今日にも連綿と相続されています。
私たち法華宗の僧俗も、大聖人に続く法華経の行者でなければなりません。