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日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの

悲母の大恩ことにほう(報)じがたし

出展:千日尼御前御返事(昭定一五四二頁)
解説:学林教授・中原本門寺住職 光林孝玄

悲母の大恩ことにほう(報)じがたし

 佐渡配流(さどはいる)中の大聖人を陰で支え、身延入山(みのぶにゅうざん)後も佐渡の地から三度、身延へ足を運んだ篤信(とくしん)の徒、阿仏房(あぶつぼう)夫妻。大聖人はかつて佐渡の地での夫妻の訪(おとな)いを述懐(じゅっかい)され、阿仏房に櫃(ひつ)を背負わせ、夜中に度々御わたりありし事、いつの世にか忘れらむ。
 只悲母の佐渡国に生まれ変わりて有るか。-大聖人
と、阿仏房の妻(千日尼(せんにちあま))にいただいた真心のお給仕(きゅうじ)を、亡き悲母の大恩に擬(なぞら)えていらっしゃいます。
 往年、大聖人は母の病状を見舞いその回復を祈られ、四年の命を延ばされたと伝えれますが、母を思慕する情、報謝の想いは、瞼(けわ)しき法華経弘通(ぐずう)の道を懸命に支える信徒の純真と重なりあい、報じがたき「悲母の大恩」という人情の至美(しび)の句として吐露(とろ)されているのであります。
 慈父の恩高きこと山岳の如く、悲母の恩深きこと大海の如し。-釈尊
 釈尊(しゃくそん)は、過去世・現在世・未来世と常に連続する魂の流転(るてん)の中で、誰もが、いつの世にかは吾が父、いつの世にかは吾が母であった、とお示しになられています。
 私たちが、報じがたきご恩の一つ一つに報ゆる道は、「実(まこと)の報恩経(ほうおんきょう)」なるお題目への信心に生き、その報恩の心の輪を世に広げていくことの中にこそありましょう。
 仏弟子(ぶつでし)は必ず四恩(しおん)を知って、知恩報恩を致すべし。-大聖人
(※四恩…一切衆生・父母・国王・三宝の恩)。

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