日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
母の御恩の事 殊に心肝に染みて母の御恩の事
出展:刑部左衞門尉女房御返事 昭定一八〇四頁
解説:布施義高 学林教授・青山持法寺裡
およそ、私たちの心の原風景には、揺籃(ゆりかご)にも似た「母親のぬくもり」があるとおもわれます。
一人一人が、大人としての優しさや、力強さを身につけるためには、各人各様、幾多の苦悩、煩悶に直面し、時に棘のような試練とも向き合わなければなりません。そうした段階を一歩一歩、懸命に踏みしめる中で、私たちは、周囲から、計り知れない程の温かな愛情を注がれ、支えられてきたことに思い至ります。親ごころ-ことに、母親の愛情は、時として硝子のように脆く壊れそうな私たちの心を、優しく抱きとめる、何にも代え得ない力があります。
「母の懐には、どこにもない格別な温かさがありました」 -与謝蕪村-
大聖人は、父母や先祖から受けた恩に報いることが、人として如何に重要であるかを私たちに諭されています。
「父の恩の高きこと須弥山猶ひくし、母の恩の深きこと大海還って浅し」-大聖人-
法華経は、他経では成し得なかった女人成仏の道を開き(提婆達多品)、本門寿量品では遂に、すべての生命の成仏を決定する真の極理(一念三千)が開顕されます。大聖人は、法華信仰に生き、その経力にあずかるところに、至上の報恩行、あるいは追善供養の本質があることを教えられているのです。
「仏は法華経を悟らせ給ひて、六道四生の父母孝養の功徳を身に備へ給へり。此の仏の御功徳をば法華経を信ずる人にゆづり給ふ」 -大聖人-